極性分子と無極性分子

水素分子 H−H や 酸素分子 O=O のように同種の原子が結合している場合では、共有電子対は両方の原子核の周りに均等に分布し、共有電子対がどちらかの原子に片寄って存在することはない。このような分子を無極性分子(nonpolar molecule)という。
次に示したものは、Chimeを利用して表示した水素分子の分子模型(分子表面を表示してある)である。マウスの左ボタンをドラッグさせて回転させることができ、原子の透視ボタンを押すと、原子どうしの結合の様子も表示させることができる。また、マウスの右ボタンをクリックさせると、様々な表示が可能である。

水素分子

原子を透視 on|off

これに対して塩化水素分子 H−Cl の場合は、共有電子対は陰性の強い(電気陰性度の大きな)Cl原子の方にいくらか引き寄せられるので、Clの原子核の周りの共有電子対の存在密度が大きくなる。この結果、H原子はいくらか正の電荷(いくぶん正の電荷を帯びていることをδ+で表す)を帯び、Cl原子はいくらか負の電荷(いくぶん負の電荷を帯びていることをδ-で表す)を帯びることになり、分子内で電荷の偏りが生じることになる。このように電荷に片寄りが生じるのを分極(polarization)といい、分子全体として分極が見られる分子を極性分子(polar molecule)という。
極性分子の例として、塩化水素と水及びアンモニアをChimeを利用して表示させた。

塩化水素分子 水分子 アンモニア分子
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ここで注意しなければならないことは部分的に分極していても(極性が生じても)、分子全体では極性がうち消され、無極性分子になっているものがあるということである。例えば、二酸化炭素分子 O=C=O (直線分子)では、CとOの間では分極している(極性が見られる)が、この2つの極性が互いに打ち消し合うので、分子全体としては分極が見られなくなる。従って、二酸化炭素は無極性分子である。部分的に分極があっても、分子全体として極性が相殺される分子、即ち正の電荷の重心と負の電荷の重心が一致するような分子は、無極性分子である。
部分的には分極しているが、全体として無極性分子になっている例として、二酸化炭素(直線形の分子)とメタン(正四面体形の分子)、フッ化ホウ素(正三角形の分子)の例をChimeにより下に表示した。

二酸化炭素分子 メタン分子 フッ化ホウ素分子
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因みに、次に示されるベンゼン(C6H6)も、全ての原子が同一平面上にあるので、個々のC−H結合は分極しているが、全体としては無極性分子となる。

ベンゼン分子

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