光学異性体(Optical Isomer)

メタンの4つの結合の手は、炭素を中心に正四面体の頂点方向に伸びている。H原子の代わりに、全て異なった原子(または原子団)が結合した分子、例えば乳酸分子を考える。

乳酸は、中心の炭素に、水素・メチル基・ヒドロキシル基・カルボキシル基の4つの異なった原子(団)が結合したものである。この4つの異なった原子(団)が配置する方法は2通りある。即ち、乳酸には異性体が2つあることになる。この2つは、原子(団)の空間的な位置関係が異なることによる異性体であるので、広く言えば立体異性体ということになるが、お互いに鏡に写した場合、実像と虚像の関係にある異性体なので、鏡像異性体(enantiomer : enantio はギリシャ語で「逆」の意味)または光学異性体という。次の2つが、乳酸に関する鏡像異性体(L-乳酸及びD-乳酸)である。マウスで操作することで、分子を回転させることができるが、これらの2つの分子はどのように回転させてもお互いに重ね合わせることができないことを確認して欲しい。

L-乳酸
D-乳酸

乳酸のように、その炭素原子に異なった4つの原子(団)が結合している炭素原子を不斉炭素原子(asymmetric carbon atom)という。不斉炭素原子1個を持つ分子は、1対の鏡像異性体を持つことになる。

鏡像異性体どうしは、平面偏光(偏光板を通過させると一定の平面内で振動する光を取り出すことができる。これを平面偏光という)の振動面を互いに逆方向に回転させる性質を持つので、光学異性体(optical isomer)とも呼ばれる。

光学異性体を持つ最も簡単なアルカンは何か。このアルカンの名前を記せ。